2014-03-15

撥水性だから油汚れが着く親油性は本当?

撥水性表面は、親油性なんだよね!?

※撥水性=疎水性(以下、撥水性と表記)

親油性になるから、撥水性表面は油汚れが着きやすく落ちにくい?。みたいな、これもコーティング関係者からときどき聞かれるフレーズです。

実はこれはワックス時代に事実であったことが、ワックスとは物性の異なる現在のコーティング時代になって迷信のようになっているものです。


結論から申し上げますと「正しくもあり
誤りでもある」と言えるのではないでしょうか。もっと正確に言いますと、コーティング剤の材質や、表面が水に濡れているのか、あるいは乾燥しているのか、によって撥油性となるか親油性になるのかが分かれます。

一般的に良く言われる例として、「油を塗った表面は、水をはじく撥水性であり、油同士はよく馴染むから親油性である」
ズバリそのとおりです。しかし、これは「油を塗った表面」のはなしです。



ワックスの場合

ワックスの成分は、カルナバなどのロウ(蝋)やオイル・有機溶剤で構成され油分が豊富に含まれています。つまり油を塗装表面に塗り広げているため、表面は当然のことながら油となじむ親油性となります。

このようにワックスは親油性であるため、大気や雨水や水はねなどに含まれる油分や油分に含まれる汚れが付着しやすくなるわけです。


コーティングの場合

それでは、コーティングはどのようになるのでしょうか?
コーティングの場合は条件によってちょっと複雑になります。それは油分を含む場合と含まない場合があるからです。

  1. 油分を含む:シリコーンオイルコーティング
  2. 油分を含まない:シリコーンレジンコーティング、フッ素レジンコーティング
  3. 油分を含まない:ガラスコーティング

1.シリコーンオイルが主原料のコーティング

撥水性かつ親油性であり油汚れが付着しやすい。
理由はワックスと同じく、オイルを塗り広げてコーティングしているため、油と馴染みが良く、汚れが油と一緒になって付着しやすいわけです。

一方、シリコーンレジンやガラスコーティングの場合は様子が異なります。それは被膜に油分が含まれておらず、被膜表面の撥水性は基本的に表面自由エネルギーの大小によって撥水(疎水)なのか親水であるかが決まるためです。

 

2.シリコーンレジンおよびフッ素レジンが主原料のコーティング

撥水性の場合は、同時に撥油性であり油汚れが付着しにくい。
シリコーンレジンおよびフッ素レジンは基本的に撥水性です。下記ガラスコーティング C.の場合と同様の理由で油が付着しにくいのです。

 

3.ガラスコーティング

ガラスコーティングは、親水性なのか撥水性なのかによって油との馴染み方が異なりますし、親水性の場合は水濡れの状態によっても油との馴染み方が異なります。
  • A.親水性表面が乾燥している場合は、親油性であり油汚れが付着しやすい。
  • B.親水性表面が水で一様に濡れている場合は、撥油性であり油汚れが付着しにくい。
  • C.撥水性表面の場合は、同時に撥油性であり油汚れが付着しにくい。

上記A.の場合:
水に濡れていない乾燥した親水性表面は親油性表面でもありますから、油分がべったりと付着します。
しばしば親水性表面の防汚性について付着した油と、親水性表面の間に水分がもぐり込み、油を含む汚れを浮かして水とともに洗い流すといった表現が見受けられますが、それほど甘いものではありません(光触媒による親水性の場合は、光触媒により有機物を分解することと混同しているものと思われます)。

上記B.の場合:
仮に親水性表面が一様に水に濡れていれば、油汚れは付着しにくい状態です。それは親水性表面上に水の膜があるため、「水」が最強の撥油性を発揮し、文字通りに水と油の関係から混じり合うことはないためです。

しかし、常に一様に水に濡れているわけではありませんね。

上記C.の場合:
油分を含まない表面でかつ、表面自由エネルギー(表面張力)が小さい場合は、水でも油でもはじく撥水性と同時に撥油性表面になりますので、水性汚れ・油性汚れとも付着しにくくなります。


撥水性と油汚れ・誤解の根源

1.「水と油は混じりません」だからと言って、親水性表面はいつも水で濡れているわけではありませんから、水なしの乾いた親水性表面の撥油性はありませんし、むしろ表面自由エネルギーは比較的小さいため親油性傾向ですから、油がベッタリと付着し、水で流した程度では落ちません。常時水で濡れている親水性表面の場合は水の膜がバリアとなって油の付着を防ぐのです。

(参考)親水性と防汚 ~ポリシラザンガラスコーティングを例として~
http://coating.th-angel.com/2013/11/blog-post_15.html



 

2.光触媒による親水性表面の場合は、光が当たると油などの有機物を分解しますので、雨水などかかりますと油も分解された汚れが落ちます。しかし、現場施工可能な光触媒コーティングの実用性は問題があります。下記の参考をご参照ください。

(参考)親水防汚:光触媒の現状と課題 その1
http://coating.th-angel.com/2013/12/blog-post.html
(参考)親水防汚:光触媒の現状と課題 その2
http://coating.th-angel.com/2013/12/blog-post_2.html


 

油で汚れ難い表面は撥油性であり、同時に撥水性でもある

油をはじくことにより、油汚れの付着を防ぐ表面は撥油性です。

油分を含まないコーティング表面においては、撥油性は表面自由エネルギー(表面張力)が、油よりも小さくなければなりません。つまり、水も含めた関係は下記のようになります。

撥水性・撥油性コーティング表面自由エネルギー(表面張力)
水(約70mN/m) > 油(約20~30mN/m) > 撥水性撥油性表面(5~10mN/m程度)

撥油性:油の接触角:80~90度かつ、撥水性:水の接触角:100~110度とする場合のコーティングの表面自由エネルギーは、5~10mN/m程度でなければなりません。



表面自由エネルギーが小さい撥油性表面は、撥水性=疎水性のシリコーンレジンコーティングやフッ素レジンコーティングあるいは、撥水性ガラスコーティングでなければ実現できないことになります。




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